NPO法人さくら車いすプロジェクトは、これまで当会と連携してパキスタンやモンゴルに車いすを送ってきました。同プロジェクトは、電動車いすの生産・販売事業会社「有限会社さいとう工房」を経営する 斎藤 省 氏が、1999年から始めた活動がその起源です。当初は車いすの修理方法や製造方法を教えに行くことが活動の主な内容でした。
その活動が10年を経過したさくら車いすプロジェクトは、アジア・中米等の障がい者の自立生活支援を目的として2011年にNPO法人として認証を受けました。その背景には障がい者団体と車いすの業界団体、在日パキスタン有志の協力がありました。
NPO法人さくら車いすプロジェクトは、受け入れ態勢が整った国に中古車いすの提供と、技術の伝承をセットにしていることが特徴です。通常は手動の車いすを送付しますが、既に自国で車いす製作が始まったパキスタンにおいては、電動車いすに特化してコンテナーで送付し、現地に車いすが到着すると整備技術ワークショップを開催しています。電動車いすは、全国の利用者から中古の車いすを提供してもらっています。
同プロジェクトが技術伝承のために訪問した国は9ヵ国で、手動車いすのコンテナー輸送はネパールとモンゴルに送り、パキスタンには電動車いすを2022年9月末現在で20回のコンテナー発送により1,300台程の電動車いすを送っています。また、それに合わせて現地で15回の技術セミナーを行っています。(残念ながらコロナ禍のためにこの3年は行くことができていません)
電動車いすは、当会が海外に送る子ども用車いすに比べてはるかに複雑な機器です。発展途上国では、故障すると修理をするための技術や部品入手が困難な場合が多く、また、修理技術に加えて障がい者一人ひとりに合わせたフィッティング技術がないと、車いすが身体に合わず二次障がいを起こしたりします。そのために、貴重な電動車椅子が修理できないまま使われなくなってしまいます。それを少しでも回避し、その国の障がい者に適した整備技術を習得してもらい、自ら整備し、障がい者自身の自立に利用してもらうことを目的としているのがこのプロジェクトです。人材育成を主眼に置いているのが大きな特徴です。
そのプロジェクトが発足以来10年を経て、2022年10月19日(水)にさくら車いすプロジェクトが拠点としているさいとう工房の社屋にて活動報告会を兼ねた記念イベントが開催されました。その来賓には、パキスタンで斎藤氏の理念を具体化し成功しているMilestone Society for Special Personsの代表Shafiq Ur-Rehman(シャフィック)氏がこの日のためにパキスタンから駆けつけていました。その他の来賓には、パキスタン大使館、外務省、JICA、ダスキン愛の輪基金(アジア太平洋地域の国々の人材育成支援活動を推進)、など同プロジェクトを支援する多くの人々の出席がありました。
当会も、これまでの経緯から招待を受け森田会長と理事一名が参加しました。森田会長は会を代表してお祝いの挨拶をしました。同プロジェクトが推進する人材育成、技術支援、現地での組織化は、非常に先進的であり、どこの団体にも見られない優れたものです、と称賛の言葉を送りました。
最後に、シャフィック氏と斎藤氏に対して今後もパキスタンを始めとして多くの海外発展途上国に、同プロジェクトとの連携を強化して車いすを送り続けることを約束しました。
2022年10月24日 事務局
(左)Milestone Societyのシャフィック氏と記念撮影
(右)これまでのパキスタンへの支援に対するお礼の盾が、シャフィック氏から関係団体の代表者に贈られました。「70th」は、パキスタン-日本国交樹立70周年を表しています。