4月10日の新年度初めての清掃活動を開催しましたが、そこに、株式会社創カンパニーの稲垣さんご夫婦が車椅子、バギー、ウオーカー、立位訓練器と電動車椅子などを届けてくださいました。株式会社創カンパニーは東京都足立区で訪問介護、居宅介護支援、児童デイサービス、相談支援などの活動を行っています。稲垣さんは、そうした活動の中で使われなくなった車椅子を当会に届けてくれるのです。
右の写真が、届けられた車椅子です。
左からバギー(青、オレンジ)、右奥には黒の日除けが付いた車椅子があります。その右には電動車椅子(2台)、さらに奥には、立ち上がる訓練を補助する立位訓練器があり、手前に横置きされているパイプ状のものは歩行訓練を行うためのウオーカー(2台)です。
稲垣さん、いつも有難うございます。
黒の日除けフードが付いた車椅子は、非常に綺麗な状態でしたので、届けてくれた稲垣さんに使用状況について伺いました。この車椅子を使っていたのは、現在中学2年生の男子生徒とのことです。彼は、小学6年生の時に脳の血管障害で倒れました。重度の障害で寝たきりになり、気管切開と胃瘻(いろう)措置が取られます。気管切開したことで言葉も失いました。リハビリ入院も含めると、ほぼ2年間入院生活が続きました。リハビリの成果もあり、気管カニューレ(かにゅーれ:気管切開後に切開部から気管内に挿入する管)も抜け、座位保持装置があれば座っていることも出来るようになりました。ご両親は、彼の状態が安定してきたので病院から家に連れて帰る決心をします。今回、稲垣さんが届けてくれた重度の障害児用の車椅子は、退院に向けて製作したものです。
家での生活が始まります。そこから、激変が起きます。自分で食事を口から摂りはじめたのです。すると、胃瘻も不要となり、身体もしっかりとしてきました。元々、体を動かすことが好きだった彼は歩行訓練以外にも、ボッチャやハンドサッカー等のスポーツもするようにまでなります。そして、言葉も戻り、冗談を言って周囲を笑わせたりするほどに回復します。文字も書き、計算も出来るようになりました。
退院して半年も経つと、身体も成長し、車椅子が合わなくなりました。現在、身体に合わせた自走の出来る車椅子の製作を依頼しています。そして、それまでの車椅子を当会に届けてくれたのです。
過去にもきれいなままの車椅子が届くことはありました。そのほとんどの理由は、使って欲しい子どもの命が尽きてしまったため車椅子が使われなくなったからです。親は、子どもの姿と重なる車椅子を「海外の子どもに使って欲しい」と強く望み、私たちもその思いに応えたいと活動しています。
しかしながら、今回の件は、正反対の出来事です。使用者が元気になることで車椅子が使われなくなり、当会に届けられました。悲しい出来事が背景にあるのではなく、子どもが元気になることで届けられた車椅子を受け取るのはこの上なくうれしいことです。今回の車椅子を、1日でも早く海外で車椅子を待っている子どもたちに届けたいと思います。
2022年 4月16日 森田 祐和